近年、Th17細胞と同様Treg細胞も炎症性腸疾患を含む様々な自己免疫疾患との関わりが明らかになってきている。昨年度の研究において、マウス腸内常在細菌のセグメント細菌が腸管Th17細胞の誘導に重要であることを報告した。今回はTh17細胞と同様に腸管Treg細胞も腸内常在細菌によって調節を受けていることを発見した。大腸Treg細胞は無菌マウスではTh17細胞は腸管粘膜固有層にほとんど存在していないが、specific pathogen free (SPF)環境下で飼育したマウスの大腸には多く存在している。そこで、様々な腸内細菌の株を無菌マウスに入れ戻し(ノトバイオート)、大腸のTreg細胞の数の増加を検討した。その結果、無菌マウスにクロストリジウム属の細菌のみを定着させただけでSPF環境下のマウスと同程度のTreg細胞の誘導が確認できた。また、クロストリジウム属細菌により誘導されたTreg細胞は腸管炎症の増悪を抑制していること、全身性アレルギーの発症も抑制していることを明らかにした。一方で、炎症性腸疾患の患者の腸内細菌ではクロストリジウム属細菌が減少していることも報告されている。これらのことから、腸内細菌のバランスが崩れクロストリジウム属の細菌が減少することにより大腸Treg細胞が減少し炎症性腸疾患の発症に関与していることが強く示唆された。以上の成果は、クロストリジウム属の細菌を用いて大腸Treg細胞を増加させることにより、炎症性腸疾患の治療や予防に応用できる重要な発見である。
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