我々はまず卵巣癌細胞株を用いて、total Aktの活性化をWestern blot法で検討した。その結果、抗癌剤耐性株でtotal Aktが活性化していることが確認された。続いて、AktのisoformであるAkt2の発現量と活性化についてもWestern blot法にて検討し、抗癌剤耐性株でAkt2のamplificationおよび活性化を認めた。これらの結果は、抗癌剤耐性卵巣癌に対するAkt特にAkt2をターゲットとした分子標的治療薬の有効性を示唆するものである。 続いて、細胞の増殖や血管新生促進に関わる細胞内シグナルmTORの活性化についても、卵巣癌細胞株を用いて検討した。その結果、抗癌剤耐性株でmTORがより強く活性化されていることが明らかとなった。さらに、TORC2の経路が活性化されているか否かを検討するためSer473のリン酸化レベルを調べたところ、抗癌剤耐性卵巣癌細胞株で活性化を認めた。このことは、mTOR阻害剤が抗癌剤耐性卵巣癌に対して有効な治療薬となりうる可能性を示唆している。そこでmTOR阻害剤の、抗癌剤耐性卵巣癌における抗腫瘍効果を検討するため、細胞増殖能を検討した。その結果、mTOR阻害により細胞増殖が抑制されることがMTSassayにより明らかとなった。続いて、mTOR阻害が2型プログラム細胞死であるオートファジーをおこすか否かについてもWestern blot法および蛍光染色法にて検討したが、オートファジーの誘導には関与していなかった。抗癌剤耐性卵巣癌におけるmTOR(TORC2)、Akt2の活性化が、HIF-2αの発現亢進をもたらしているかどうかについては来年度以降検討する予定である。
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