本年度は、昨年度に引き続き、光トポグラフィー(NIRS)の導入を試みた。近赤外光を用いて頭皮上から非侵襲的に脳機能マッピングを行うために、シークエンスの設定、および画像フォーマットの変換および3次元レンダリングについての選考を行った。またNIRS-SPM (Statistical Parametric Mapping)を用いて、その3次元化されたデータのレンダリングによる妥当性についても検討を行った。さらに当初の実験計画に基づいて、被験者(30名)を募り、経済行動実験、MRI画像撮像、NIRS撮像を行った。また本年度は神経経済学に関するタスクとして、囚人のジレンマゲームを用いて実験を行った。それら経済行動実験の結果と脳の機能的・形態的評価[脳機能画像(fMRI & fNIRS)、脳形態計測法(VBM)、および拡散テンソル画像法(DTI)などの画像データ]との相関について、特に前頭前皮質および扁桃体などの大脳辺系を中心に解析を行った。また経済行動実験では、囚人のジレンマゲームでは約10%程度の協力率が起ったが、さらにその協力率を上げるために、アプルーバルステージ付き囚人のジレンマゲームという新しい経済ゲームを考案し、協力率が上昇することを確認し、そのゲーム構造の違いから、この協力率の上昇が引き起こるメカニズムについても明らかにした。この結果は、すでに上海交通大学にて報告しており、現在、論文投稿準備中である。さらにこのアプルーバルステージ付き囚人のジレンマゲームによる隠れうつ病患者の抽出に関する応用も試みており、今後の成果が期待できる。以上、本年度の研究実施計画に基づいて研究を順調に遂行した。
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