研究概要 |
本年度は、作製した多相性リン酸カルシウム(Poly-CaP)試料の相構成とCa溶出挙動の解析、ならびに象牙芽細胞様細胞に対する効果の評価を行った。 1)直径9mm、厚さ2mmの緻密性HApディスクを、真空環境下で1350℃にて10時間加熱処理した試料について、表層から1000μmの深さまでの組成をX線回折法により分析した。その結果、本試料は、表層から50μmまでがα-TCPとTTCPのみで構成され、100μm以上の深さからHAp相が出現することが明らかとなった。また、同様にして作製したPoly-CaP試料をリン酸緩衝溶液または酢酸緩衝溶液に浸漬し、表而からのCa溶出濃度をICP法により経時的に測定した結果、中性と酸性いずれの環境下においても,Poly-CaPからはコントロールである非加熱HApよりも有意に高い濃度のCaが持統的に溶出することが分かった。 2)Poly-CaP試料上に分化誘導培地を用いて調整したマウス象牙芽細胞様細胞MDPC-23を播種し、1または3日間培養後、MTTアッセイにより細胞の増殖を評価するとともに、1,3,7,14日間培養後にALP活性の測定を行った。その結果、Poly-CaPでは、非加熱HApと比較して有意に多くの細胞付着が生じ、また、培養期間を通して、細胞のALP活性も有意に高いことが分かった。一方、分化マーカーの発現の検索については、total RNAの回収とリアルタイムPCRの条件設定までが完了し、現在、Poly-CaP試料上でMDPC-23細胞を培養した場合のDSPP mRNAの発現を中心に検討を行っているところである。 これらの結果より、Poly-CaPでは、その表層を占める可溶性リン酸カルシウム相が溶解してCaが溶出することにより、象牙芽細胞様細胞の付着と分化能が促進される可能性が示された。
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