研究概要 |
本年度は、昨年度から継続中の象牙芽細胞様細胞を用いた評価に加え、動物案験によるPoly-CaPの硬組織誘導能の評価、ならびにPoly-CaPと接着性レジンとの接合性について検討を行った。 1)MDPC-23細胞をPoly-CaPまたはHAp上に播種して7日間培養後、DSPPのmRNA発現量をリアルタイムPCR法にて比較した結果、Poly-CaPにおいて有意な発現の増強が認められた。 2)9週齢雄性Wister ratの上顎第一臼歯にPoly-CaPまたはHApを用いて直接覆髄処置を行い、2または4週間後に組織切片を作製し、HE染色を施して病理組織学的に評価を行った。その結果、2週間後では、dentin bridgeの形成、歯髄の炎症状態ともに両者に差は認められなかったが、4週間後では、Poly-CaPによる覆髄後のdentin bridge形成はポジティブコントロールとして用いたDycalの場合と同様で、HApと比較して有意に多く,の例でcomplete bridgeの形成が認められた。歯髄の炎症については、HApでは主に中等度から重度であったのに対し、Poly-CaPでは軽度な炎症にとどまっている傾向がみられた。 3)HApにエッチ&リンスまたはセルフエッチングシステムを適用後、SEMにて接着面の状態を評価した。その結果、リン酸、セルフエッチングブライマーのいずれの処理でもHAp表面の脱灰が生じ、用いたすべての接着システムで、脱灰によって形成されたHApの空孔部をレジン成分が満たして緊密に接合している様子が観察された。 以上の結果より、Poly-CaPを露髄面に適用した場合、硬組織形成細胞の機能促進によりdentin bridgeの形成が促進されること、および、Poly-CaPと接着性レジンを併用することで窩洞の緊密な封鎖が得られる可能性が示唆された。
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