H21年度は、iPS細胞から椎間板髄核細胞、線維輪細胞を誘導することを目的として、実験を行った。iPS細胞を未分化状態を維持することが本研究に必要である、一方で椎間板細胞と共同培養することで分化誘導するにはフィーダー細胞を用いない方法での培養が必要である考えるが、このフィーダー細胞を用いない培養法ではiPS細胞の維持が困難であった。そこで、Leukemia inhibitory factor(LIF)を産生するフィダー細胞としてSNLP細胞を京都大学、山中伸哉教授から紹介して頂きイギリスのSanger研究所から、SNLP Feeder細胞を譲り受けた。本フィーダー細胞を用いることで、iPS細胞の継代維持が可能であった。 次に共培養するに当たり、iPS細胞の増殖速度と椎間板細胞の増殖速度を近づける必要があった。本研究室での培養では、iPS細胞の増殖速度は非常に速く、5日毎に継代が必要であったが、椎間板細胞の増殖速度は遅く、14日毎の継代が必要であった。従うて、増殖速度の違いから分化誘導におけるニッチの形成が不十分になると予想されたため、お互いの増殖速度を調節する必要があった。FBSを濃度を減量した培養液iPS細胞に使用し、FBS濃度を増加したものを椎間板細胞に用いた。この結果、互いの培養条件の均衡化を図ることを現在行っている。 また、一部のiPS細胞と椎間板細胞を共培養することを試みたが、いずれも椎間板細胞を誘導するには至らなかった。iPS細胞から直接椎間板細胞の誘導が困難であったことから、本研究計画を若干変更することが必要であった。すなわち、iPS細胞から胚様体を形成しレチノイン酸を用いて骨髄間葉系細胞(MSC)を誘導する。そしてMSCから椎間板細胞を誘導するものである。 現在、この誘導されたMSCを確認する作業を行っているところである。
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