研究概要 |
これまで申請者は,セラミドがceramide-activate protein phosphatase依存的な炎症性キナーゼ"p38"の脱リン酸化/不活化を促進することを見出し,このようなセラミドの作用がプロスタグランジンやIL-6などの炎症性メディエーターの生成を強力に抑えることを明らかにした。また,セラミドの産生経路と代謝酵素の活性調節において,酸性グルコセレブロシダーゼ(GBA1)がサルベージ経路からのセラミド生成に関わる重要な酵素であることを見出した。GBAlの発現量の低下は,腫瘍細胞での刺激に伴うセラミド生成量の低下,炎症性キナーゼとして知られているp38の活性化およびp38依存的なIL-6の産生を顕著に亢進することを明らかにした。これらの結果は,GBA1がセラミド生成に関わることで,過剰な炎症性応答を抑えていると考えられる。そこで,本年度では,腫瘍細胞でのGBA1によるセラミドの量的調節への寄与を明らかにした。ヒト腫瘍細胞を用いて,GBA1による細胞内セラミド量調節をGBA1阻害剤,GBA1遺伝子の過剰発現またはRNA干渉による発現量を低下による細胞内セラミド量の変動を質量分析により解析した。siRNAを用いてGBA1発現を抑制した結果,C16-セラミドが有意に減少し,一方でグルコシルセラミド量は増加した。逆にGBA1の過剰発現はセラミド量を増加させた。したがって,GBAIの活性は細胞内セラミド量と正の相関し,GBA1は細胞内セラミド量を調節する重要な酵素であると考えられる。
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