研究概要 |
早期に抗がん剤治療効果を判定する方法論を開発し、より効率的な化学療法レジメンの個別化を可能とし、進行肝細胞癌の生命予後を延長させる事を目的に研究を進めてきた。前年度のフコシル化ヘモペキシンの検討に加え、血管新生に関与するサイトカインを中心としたマルチプレックスエライザシステムでの検討で、肝癌の化学療法剤の治療効果予測を試みた。昨今多数の例で使用されている分子標的薬であるソラフェニブについては、30症例と少数例での検討ではあるが、Ang-2,FST,G-CSF,HGF,leptin,PDGF-BB,PECAM-1/CD31、及びVEGFの発現が亢進している症例では、治療への反応性が不良である事が多く、治療前にこれらを測定する事が治療効果予測に有用であるという事を見出しており、現在論文投稿中である。また、低用量5フルオロウラシルとシスプラチンを用いた化学療法については、血管増殖因子のうち、血清フォリスタチンが高値の例において、予後が不良であることも見出し、論文投稿中である。網羅的糖鎖解析の手法を用いた検討では、肝癌患者で特徴的な糖鎖発現があることを見出している。特に化学療法効果との関係において、低用量5フルオロウラシルとシスプラチンによる化学療法及びソラフェニブ療法の、治療前の糖鎖パターンによる効果予測は困難であったが、ソラフェニブ治療時の副作用である手足症候群や皮疹の発現が、治療前の糖鎖パターンにより予測可能である事を示唆する所見が得られており、現在さらに解析を進めている。本年度の研究で、多くの化学療法治療予測に関連すると思われる因子を見出しており、今後の前向き検討へ向けての足がかりとなる研究成果を得ることができた
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