研究概要 |
本研究は,BMPによる骨形成過程で発現するBMPアンタゴニストを同定し,その機能を抑制することによりBMPによる骨形成を促進させる方法を開発する目的で実施された.ヒト骨髄由来間質細胞(hBMSC)をBMP-2で刺激すると,BMPアンタゴニストであるSOSTの遺伝子発現が有意に亢進することが明らかとなった.そこで,SOSTの発現をsiRNAで抑制した状態でhBMSCの骨芽細胞分化誘導を行うとアルカリホスファターゼ活性の上昇やアリザリンレッドによる染色性の亢進が認められた.すなわちhBMSCにおいてSOSTの発現を抑制することによりBMP-2による骨芽細胞分化が促進されることが明らかとなった.さらに,前年度にBMPアンタゴニストの抑制因子の一つであると明らかとしたTNF-aとの相互作用についても検討を加えた.hBMSCにTNF-a(40ng/mL)を作用させても細胞増殖は抑制されなかった.また,BMP-2(300ng/mL)によって誘導されるRunx2やOsterix, ALPの遺伝子発現はTNF-aとの同時刺激により強く抑制され,アルカリホスファターゼ活性やアリザリンレッドの染色性も有意に抑制された.以上からhBMSCにおいてはSOSTなどのBMPアンタゴニストの発現を抑制することにより骨芽細胞誘導が促進できること,また,TNF-aはBMPアンタゴニストの遺伝子発現を抑制するもののBMP-2による骨芽細胞分化も有意に抑制することが明らかとなった.今後はBMP-2による骨形成をより確実なものにするためにはTNF-aのシグナルを制御することも有効な手段の一つであることが示唆された.
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