肝臓は各臓器移植の中でも生着しやすい臓器として知られているが、メカニズムのひとつに肝類洞を構成する類洞内皮細胞による循環免疫細胞の寛容化が挙げられる。これまでマウス肝類洞内皮細胞によって抗原提示されたT細胞は直接および間接認識経路で死滅あるいは麻痺に陥り、移植抗原特異的免疫寛容が誘導されることを示してきた。本年度の研究では、肝臓移植の際摘出されたレシピエントの肝臓から類洞内皮細胞を分離し、移植後の肝臓に門脈投与することでキメラ類洞内皮細胞を構築し、両経路で抗原提示するT細胞を共に寛容化する可能性を検討し、以下のような結果を得た。1)マウス類洞内皮細胞の門脈内移入によるキメラ類洞内皮細胞の構築:同種異系マウス間で、免疫不全マウス(Rag2/γ-chain/B6マウス)に類洞内皮細胞を門脈内移入し、4週後にB6マウスから同系骨髄移植にて免疫再構築を行った。末梢血解析ではCD4、CD8T細胞およびB細胞による免疫再構築を認め、MHC class I染色によってキメラ類洞内皮細胞の構築が確認できた。キメラ内皮が誘導できた個体では、in vitro MLRによってアロ反応性T細胞の応答が有意に抑制された。2)キメラ肝類洞構築をもつマウス(キメラ肝マウス)に対するアロ心移植モデルを用いた検討:1)で確立した免疫再構築後のキメラ肝マウスに対して、移入した類洞内皮細胞と同系マウスをドナーとしたアロ心移植を行った。キメラ肝マウスではグラフト心の長期生着例があったのに対し、キメラ化していないマウスでは移植後14日までに全例拒絶された。またキメラ肝マウスの長期生着例では抗ドナー抗体産生が完全に抑制されていた。これらの結果より、アロ類洞内皮移入によるキメラ肝作成は可能であり、キメラ肝により移植臓器に対する細胞性および液性免疫寛容誘導が可能であることが明らかとなった。
|