本研究では、PET脳酸素代謝検査において、撮像した画像データから抽出した脳組織の時系列曲線から入力関数を推定する方法を開発し、検査を非侵襲にすることを目的とした。 今年度の研究では、検査で用いる標識酸素および標識水の2種の薬剤に対する全身での動態に基づいたモデルを記述し、モデル入力関数を構築した。またこのモデル入力関数からこれらの薬剤に対する脳組織動態モデルに基づき組織モデル関数を計算した。 また計算したモデル入力関数を、水および酸素を短時間投与した検査で得た血中放射能濃度曲線を最適化法を用いて直接フィッテングし、モデル関数を構成するパラメーターに対する初期値と制限値を得た。 健常者による迅速脳血流・酸素代謝検査で得られたPETダイナミック画像データから複数の脳組織曲線を抽出し、得られたそ組織モデル関数を用いてこれらの複数の脳組織曲線を同時にフィッティングし入力関数を推定した。現状では、15%程度での再現性が確認されている。 これらに加え、本方法の有効性、限界を明らかにするためシミュレーションにより再現性を検討する計算を行っている。具体的には、PETで測定される組織曲線には常に少なからずノイズを伴うため、シミュレーションで組織放射能濃度曲線を作り、ノイズを加えた上で入力関数の再現性について計算している。また本計算では水の分配定数(血液と水に含まれる水の割合)を0.8ml/gと仮定しているが、この仮定に対する影響についてシミュレーションにより検討している。
|