本研究の主目的は、磁気共鳴画像法の一種である、T1ρ強調画像とT1ρ値計算画像を用いて、変形性膝関節症により傷害された関節軟骨内の病変部を検出すること、その進行度を定量的に評価することである。具体的には、従来の画像診断による形態的評価に加え、1)関節軟骨の健常部と病変部を分離し、病変の進行度を定量的に評価できるように、撮影方法と画像結果の解析方法に関して、最適な条件を探求し、改良する。2)我々の提唱する定量的評価法の有用性に関して、変形性膝関節症の患者を対象に施行した、画像所見と人工関節置換術施行時に採取した切除標本と対比し、病理組織学的結果と対比する。3)異なる観察者であろうと、統一した解釈が可能なように、定量的評価法の基準を作成する。この研究結果により非侵襲的かつ簡易な画像検査法として、整形外科医の診療を支援することを目的としている。 当該年度において、日常診療の限られた検査時間内(約30分以内)に終了でき、且つ、信頼性のある定量的検査が施行できる最良な画像撮影プロトコールを作成した。また、関節軟骨内の健常部と障害部を判別する為の基準を作成する為、当施設の倫理委員会の基準に応じた十分な説明と同意を取得した患者を対象に、人工膝関節置換術前にT1ρ強調画像とT1ρ値計算画像の撮影を開始した。しかし、当該年度は当研究に賛同し参加して頂けた患者数が、当初予測していたよりも少数であった為、画像所見と手術時に採取した切除標本の対比をするには、統計学的に有用か否かを判断するには不十分と考えた。来年度には症例数が増加すると予測しており、十分な症例数から得られる結果を基にして、画像所見と病理組織学的所見との対比を行い、我々の提唱する定量的評価法を検証する予定である。また、変形性膝関節症により傷害された病変の早期発見への有用性を検証する予定である。
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