Ewingファミリー腫瘍(Ewing family tumors;以下EFT)は、小児悪性腫瘍の約2.3%を占め、若年者に好発する高悪性度の骨・軟部腫瘍で、極めて予後不良である。近年系統的化学療法が導入され5年生存率は改善されたが、転移再発例の予後は30%に満たず、予後改善はほぼ限界に達している。近年、がん化メカニズムの解析結果に基づき、腫瘍特異的分子標的治療薬が臨床的に用いられるようになっている。EFTのほとんどの症例では、特徴的染色体相互転座が生じており、11番染色体上のEWS遺伝子が、22番染色体上のFLI1遺伝子に結合し、EWS-FLII融合遺伝子が形成される。この遺伝子産物であるEWS-Fli1蛋白は異常な転写因子として機能し、EFTの発がんの原因と考えられている。これまでに本研究代表は、強力にEWS-FLI1発現をノックダウンすると、EFT細胞に細胞死の一種である細胞老化(senescence)を誘導できることを見いだしたが、詳細なメカニズムは以前不明である。 一般に、線維芽細胞培養系において、細胞が老化に陥るのは老化誘導刺激後、数日してからである。H21年度の解析で、EFT細胞株において強力にEWS-FLI1発現をノックダウンすると、12時間後からEWS-FLI1タンパク質の発現低下を認め、すでに24時間後にはEFT細胞に細胞死の一種である細胞老化を示唆する細胞の大型扁平化を呈することを見いだした個体レベルで細胞老化を研究するため、EWS-FLI1ブレイクポイント特異的、EWS、FLI1それぞれに対するテトラサイクリン誘導型shRNA発現ベクターを作製した。今後はshRNA安定発現EFT細胞株を作製し、ヌードマウスにEFT腫瘍を作製した後に、in vivoで腫瘍に細胞老化を誘導可能かどうか検証する予定である。
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