Ewingファミリー腫瘍(Ewing family tumors;以下EFT)は、小児悪性腫瘍の約2.3%を占め、若年者に好発する高悪性度の骨・軟部腫瘍で、極めて予後不良である。近年、がん化メカニズムの解析結果に基づき、腫瘍特異的分子標的治療薬が臨床的に用いられるようになっている。EFTでは、特徴的染色体相互転座が生じており、EWS-FLI1融合遺伝子が形成され、EFTの発がんの原因と考えられている。これまでに本研究代表は、強力にEWS-FLI1発現をノックダウンすると、EFT細胞に細胞死の一種である細胞老化を誘導できることを見いだしたが、詳細なメカニズムは以前不明である。一般に、線維芽細胞培養系において、細胞が老化に陥るのは老化誘導刺激後、数日してからである。H21年度の解析で、EFT細胞株において強力にEWS-FLI1発現をノックダウンすると、12時間後からEWS-FLI1タンパク質の発現低下を認め、すでに24時間後にはEFT細胞に細胞死の一種である細胞老化を示唆する細胞の大型扁平化を呈することを見いだした。H22年度の解析では、マイクロアレイ解析により、EWS-FLI1ノックダウン後、12時間、24時間と経時的に多くの遺伝子発現変化が増強していることがわかった。細胞老化特異的βガラクトシダーゼで染色されるのは、細胞老化誘導後数日してからであるが、もっと早期に発現変化を来す遺伝子が関与している可能性がある。特に、EWS-Fli1発現抑制後24時間で8倍以上顕著な発現変化が見られた遺伝子の中には、細胞周期関連因子が含まれていることは注目すべき点である。本研究者らは、EWS-FLI1タンパクは、細胞周期を異常に制御していることを報告しており、細胞老化は永久的な細胞周期停止であることから、これらの因子を中心に解析予定である。
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