本研究の目的は、functional MRI(fMRI)を用いて味覚刺激時のヒト脳機能領域を明らかにした上で、拡散テンソルtractgraphyにより、fMRIで明らかとなった味覚領域に至る神経繊維を追跡・描出し、ヒト味覚伝導路を構造面から追求すること、さらに、血液スピンラベリングを用いて味刺激時の、味覚領域における左右脳血流量を定量評価することで機能面からも追求し、ヒト味覚伝導路を明らかにすることである。 21年度はまず、fMRIおよび拡散テンソルtractgraphyのデータを取得・解析する環境を整え、fMRIの解析ソフトであるStatistical Parametric Mapping(SPM)および、拡散テンソルtractgraphyの描画ソフトであるdiffusion TENSOR Visualizer(dTV)を用いた基本的なデータ解析・画像処理法を習得した。 次に、実際のfMRI実験における味覚刺激方法、実験パラダイム、MRIの撮像シークエンスについての検討を行い、味覚刺激実験による脳活動データを取得した。これらの取得したデータを解析した結果、味覚刺激により、大脳皮質第一次味覚野である島・前頭弁蓋に賦活が生じることを確認した。 拡散テンソルtractographyに関しては、データ取得のためのdiffusion tensor imageの撮像方法の最適化を行い、dTVにおける線維追跡方法の検討を合わせて行った。さらに、fMRIでの活動領域付近をseedにして、線維追跡を行った。 22年度は、21年度に得したこれらの知識・手技をさらに発展させていく予定である。 fMRI、拡散テンソルtractgraphy、血液スピンラベリングを組み合わせた実験報告は未だ希少で、味覚伝導路における報告は過去に例をみない。本研究により、ヒト味覚伝導路が最新の技術によって画像化され、機能面でも評価されれば、味覚研究に大きく寄与するものと考えられる。
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