研究概要 |
本研究は、上皮成長因子(EGF : Epidarmal growth factor)ならびに線維芽細胞成長因子(FGF : Fibroblast growth factor)によってその増殖・分化を制御されている歯原性腫瘍エナメル上皮腫が、EGF/FGFの制御因子であるSproutyファミリーによってその増殖・分化がどのように制御されているかを解析することを目的としている。そこで本年度はエナメル上皮腫細胞株として単離されたAM-1(Harada H. et al. J Orsl Pathol Med. 27 : 207-12, 1998.)を用いて、Sproutyの機能をin vitroで解析した。 AM-1におけるSprouty2とSprouty4のmRNAレベルでの発現を調べるため、AM-1をEGFとFGFで刺激を行い、Sproutyファミリーの発現量を比較した。その結果、Sprouty2, Sprouty4ともにFGF刺激で強く誘導されていることが分かった。そこで次にAM-1におけるSprouty2とSprouty4の機能について解析するため、human Sprouty2(Full length)とhuman Sprouty4(Full length)ならびに各々のドミナントネガティブ変異体を作成し、これらをAM-1に強制発現させることでEGFおよびFGF刺激時のMAPKのリン酸化を調べた。その結果、Sprouty2を強制発現させたAM-1のMAPKのリン酸化はEGF刺激時に増強し、FGF刺激では逆に減弱した。Sprouty4に関してはEGF/FGF両刺激共にMAPKのリン酸化に大きな影響はなかった。 一方、AM-1におけるSproutyの機能をアポトーシスシグナルで調べるため、同様にAktのリン酸化およびBCL-xLの発現量を各々の刺激下で比較した。その結果、FGF刺激下でSprouty2がAktのリン酸化を増強し、またBCL-xLの発現も増強させることが分かった。 以上の結果から、Sprouty2がEGF刺激ではMAPKのリン酸化を促すことで増殖・分化を促進し、同時にFGF刺激では抗アポトーシスなシグナルを活性化することで増殖・分化を制御していることが示唆された。
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