当該年度においては、歯科医院を訪れたスケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行う方針の患者と、Full Mouth Disinfection(FMD)を行う方針の患者計10名程度について、口腔診査と唾液検体の採取を行った。口腔診査においては、現在歯数、プロービングデプス、プロービング時の出血の有無、口腔清掃状態、さらにう蝕歯数、治療歯数についての情報を取得し、これらのデータについてデータベース化を行った。唾液採取については、それぞれの患者について、主に初診時、口腔ケア・スケーリング終了時点の検体の取得を行った。得られた唾液検体それぞれについてDNAを抽出した後、16S rRNA遺伝子を用いたTerminal restriction fragment length polymorphism(T-RFLP)解析を行い、その細菌構成をT-RFLPピークパターンとして表してみると、制限酵素HaeIII、RsaIを用いて得られたピークパターンからは、初診時と口腔ケア・スケーリング終了時の間で、特徴的な変化を示すピークを見出す事はできなかった。このことから、口腔ケア、スケーリングは、ある特定の菌種に作用するものではない可能性が考えられる。また、この処置におけるT-RFLPパターンの変化は、個人間のパターンの違いに比べると小さなものであり、簡単な口腔清掃は大きな口腔フローラの変化は起こすものではない可能性が示唆された。
|