本研究は2型糖尿病および動脈硬化症の病態における共通の機序としてのマクロファージ表現型と機能、特にマクロファージ増殖に着目し以下の検討を行った。まず2型糖尿病のモデルとしてdb/dbマウスの膵島におけるマクロファージ浸潤と表現型(M1、M2)について免疫組織学的に検討を行った。10週齢のdb/dbマウスは体重、随時血糖値のいずれも対象群に比し有意に上昇し、このとき対象群では膵島1個当たり膵島内に0.4個のCD68陽性マクロファージの浸潤を認めたのに対し、db/dbマウスでは6.8個と浸潤マクロファージが著明に増加していた。またこれらのマクロファージの55%が炎症性のM1マクロファージであった。さらにKKAyマウスにおいても膵島へのM1マクロファージ浸潤の有意な増加が見られ、これらのことから2型糖尿病の発症機序、特に膵島におけるインスリン分泌低下にM1マクロファージの浸潤が強く関与している可能性が示唆された。 浸潤マクロファージ増殖の動脈硬化や糖尿病の発症、進展への関与を明らかとするためにマクロファージ増殖抑制マウスを作製した。スカベンジャー受容体プロモーター下に増殖抑制因子であるp27を配したコンストラクトを作製し、プラスミドを用いたマクロファージ系細胞株RAW細胞におけるp27の発現と増殖抑制効果を確認した。このコンストラクトを用いたトランスジェニックマウスを得た。このマウスは動脈硬化、2型糖尿病のみならずマクロファージ浸潤が関与する病態に対するマクロファージ増殖制御による疾患の発症、進展抑制効果の検討に広く有用であると考える。
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