本研究は2型糖尿病および動脈硬化症の病態における共通の機序としてのマクロファージ表現型と機能、特にマクロファージ増殖に着目し以下の検討を行った。2型糖尿病のモデルであるdb/dbマウスの膵島におけるマクロファージ浸潤と表現型(M1、M2)について免疫組織学的に検討を行ったところコシトロールに比しdb/dbマウスでは浸潤マクロファージが著明に増加していた。またこれらの浸潤マクロファージの55%が炎症性のM1マクロファージであったことから2型糖尿病の発症機序、特に膵島におけるインスリン分泌低下にM1マクロファージの浸潤が強く関与している可能性が示唆された。浸潤マクロファージ増殖の動脈硬化や糖尿病の発症、進展への関与を明らかとするためにマクロファージ増殖抑制マウスを作製した。スカベンジャー受容体プロモーター下に増殖抑制因子であるp27を配したコンストラクトを用い(SRA-hp27)、オス12匹、メス4匹のファウンダー(FO)を得た。しかしTg FOのオスを野生型メスと交配させたところTg FOオスのいずれも妊孕能をもたず、またTg FOメスと野生型オスとの交配では、妊娠し出産するものの、ほとんどの仔は出生後間もなく死んでしまうことが明らかとなった。Tg FOオスの一匹を屠殺後、骨髄細胞を培養し、p27の発現、増殖能を検討した。マクロファージへの分化誘導3日目にコントロールに比しTgでp27 mRNAの発現は46倍、5日目には314倍と増加し、分化に伴ってp27の発現が誘導されていた。また、Tgのマクロファージは有意に増殖が抑制されており、予定していたマウスが得られたものと考えられる。マクロファージ特異的p27の過剰発現により妊孕能を喪失するメカニズムは明らかではなく、マクロファージ増殖抑制による生殖器発生への影響など、今後の検討課題である。
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