研究概要 |
1. 以前の報告[Kumai et al Laryngoscopc. 2009 119:799-805]で分離培養したフェレットの脂肪幹細胞(上部ウェル)と筋線維芽細胞(下部ウェル)を共培養(24ウェルプレート)したのち、6日目、12日目に、上部ウェルのみを除去し、培養液を交換した後下部ウェルのみ単培養を継続し、24時間後に培養液を採取した。コントロール群として、下部ウェルに筋線維芽細胞を、また上部ウェルには培養液のみを入れ上記と同様にして第7日目、13日目に培養液を採取した。次にELISA法を用いて(1) コラーゲン(2) ビアルロン酸(3) 肝細胞増殖因子の動態をコントロール群と比較した。さらに第7日目、13日目に下部ウェルに存在する筋線維芽細胞をその特異的マーカーであるα-smooth muscle actin(α-SMA)に対する抗体を用いて(1) 免疫染色(2) FACSを用いて定量的、質的にその発現動態を比較検討した。 2. 次にHGFが、単独で瘢痕声帯より分離した筋線維芽細胞に対し抗線維化作用を呈するか検討するために、通常の24ウェルプレートを用いて、筋線維芽細胞を24時間培養した後、4種の異なる濃度(0,30,50,100ng/ml)のHGFを培養液に添加しさらに48時間培養後に培養液を採取し、(1) コラーゲン(2) ヒアルロン酸以上はELISA法で定量的に、また(3) α-SMAの発現率をFACSにより定量的に検討し、HGF濃度に依存した動態を示すかどうか検討した。 3. 最終的に脂肪幹細胞の抗線維化作用の主要因がHGFであるかと検討するために、抗HGF抗体を用いた中和実験を行う。1. で用いた2群に4種の異なる濃度(0,0.5,1.0、5.0ng/ml)の抗HGF抗体を添加し、2. と同様の3項目の動態を見ることで抗HGF抗体濃度に依存的に抗線維化作用が変化するのかを検討した。 以上の検討から脂肪幹細胞の瘢痕声帯に対する抗線維化作用の詳細が脂肪幹細胞より分泌されるHGFにより制御されていることを明らかにできる意義がある。
|