まずフェレットの声帯を電気凝固することで得られた瘢痕声帯より分離培養した筋線維芽細胞に肝細胞増殖因子(HGF)を添加した場合と、脂肪幹細胞と共培養した場合との抗線維化作用を、細胞外マトリックスの産生量をELISA法により、また筋線維芽細胞の特定のマーカーα-smooth muscle actin (α-SMA)の発現量を免疫染色法およびFACSを用いてそれぞれ比較解析した。次に筋線維芽細胞と脂肪幹細胞を共培養し、さらに培養液に抗HGF抗体を添加し、脂肪幹細胞から分泌されると予測されるHGFの作用を中和することで上記の抗線維化作用が抑制されるか検討解析した。 以上の検討から脂肪幹細胞から分泌される分子のうち少なくともHGFは、瘢痕声帯から分離培養した筋線維芽細胞に対して抗線維化作用を有することが実証できた。本研究は以下の2点において独創的である。1)瘢痕声帯よりの繊維芽細胞および脂肪幹細胞の共培養系を用いたIn vitroでの詳細なメカニズムの研究はまだ報告がないこと。2)脂肪幹細胞より分泌される抗線維化作用を有する分子の動態を解明した報告は今までなく、幹細胞を用いた瘢痕声帯に対する新たな治療法の開発に大きく貢献する独創的な基礎研究となる。これらにより脂肪幹細胞の瘢痕声帯に対する抗線維化作用を担う分子が明らかになり、さらに今後その分泌量を維持増加させるための特定の分子を明らかにすることで、脂肪幹細胞の瘢痕声帯に対する臨床応用に向けた独創的な研究の第一歩となると考えられる。
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