本研究の目的は、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率が全国平均と比較して2倍以上と高率である北海道において、生後1ヵ月児をもつ母親のSIDSに対する知識とその関連要因を明らかにすることである。平成22年度は昨年度より配布したアンケート調査の集計と分析を行った。北海道内の32施設において、生後1ヵ月健診を受診した母親に質問紙を配布、郵送にて回収をした。配布期間は2009年11月10日~2010年3月31日である。質問紙は研究者が独自に作成したものを用いた。質問項目は疾患の知識、厚生労働省の「乳幼児突然死症候群(SIDS)対策強化月間」の知識、実際の育児行動(児の就寝体位、栄養方法、同居家族の喫煙)、育児情報の情報源及び属性である。質問紙配布数は4071部、回収数1843部で、回収率は45.3%であった。SIDSについて「知っている」と回答した母親は全体の42.5%、「名前は聞いたことがある」は52.9%であり、「知らない」は4、3%であった。これにより、SIDSの疾患名自体は生後1ヵ月児をもつ母親に広く普及していることが推測された。一方で、SIDSを引き起こすリスク因子の自由回答では、「うつぶせ寝」を回答した母親は59.5%、「喫煙」59.8%、「非母乳哺育」14.0%であり、十分に普及していない結果が示された。また、厚生労働省が毎年行っている「SIDS対策強化月間」については、94.7%の母親が「知らない」と回答しており、全く普及していないことが示唆された。全国のSIDS発症率は、厚生労働省の知識普及キャンペーン開始以降、3分の1に減少していることから、SIDSの予防には知識の普及が有効と考える。よって、母親の知識の普及が十分でない北海道において、効果的な保健指導による知識普及のあり方を検討していく必要があると考える。
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