我々の研究グループはポリプロピレンの骨格と、その内・外側面に付加したコラーゲンスポンジの足場からなる組織再生誘導型人工気管の開発・臨床応用を行い良好な結果を得ている。 組織再生誘導型人工気管は生体親和性、代用気管としての物性など優れた性質を有している反面、骨格として用いているポリプロピレンが非吸収性であるため小児は適応外としている。小児では体の成長とともに再建部位の成長が必要であり、軟骨細胞で気管の枠組みを形成することができれば小児の気管病変の治療に対しての応用が期待できる。本研究では骨格として機能しうる気管軟骨の効果的な再生を目指し、組織再生誘導型人工気管に軟骨細胞を付加した新規培養気管を開発し、in vivoにて評価を行った。 全身麻酔下にウサギから肋軟骨を採取。軟骨膜を除去し、酵素処理にて軟骨細胞を回収・培養し、組織再生誘導型人工気管に導入した新規培養気管を作成した。ウサギの気管欠損部に自家移植して組織学的に評価した。コントロールモデルとしては、ウサギの気管欠損部に組織再生誘導型人工気管のみを移植した。 新規培養気管モデルでは、気管軟骨欠損部位に軟骨様組織の再生を確認した。一方コントロールモデルでは、移植から8週後の標本で気管断端において軟骨膜の延長と少量の軟骨組織の増殖が認められた。しかし、骨格として機能するために十分な軟骨再生は得られなかった。 自家軟骨細胞を付加した培養気管が、気管軟骨の再生に有効である可能性が示唆された。
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