研究課題
臨床において癌や外傷、炎症、先天性奇形などにより喉頭や気管といった気道の一部を切除せざるを得ない場合があり、代替となる気道再建材料の開発は急務である。本研究では、気道の軟骨再生に最適な足場材料の開発、マウス線維芽細胞由来iPS細胞の軟骨細胞への分化誘導技術の開発、およびこの両者を組み合わせて得られた軟骨組織に関して動物への移植実験等により気道の骨格としての有効性、長期安定性などについての検証を行い、気道の内腔保持を担う骨格として利用可能な軟骨組織の作製手法を確立することを目的としている。今年度の実績、成果喉頭気管軟骨欠損部への移植による評価;培養によって得られたマウスips細胞をコラーゲンゲルに包埋し、さらに足場となるコラーゲンスポンジに浸透させ三次元培養を行った。軟骨分化培地を使用し、分化誘導したiPS細胞を組織像や蛋白質、遺伝子の発現に関して評価を行った。麻酔下に免疫不全ラットの気管を露出させ、気管軟骨部分欠損モデルを作成した。上記により、得られた軟骨組織片を含む足場材料を欠損にあわせて加工し、移植を行った。4週間の観察期間ののちに安楽死を施し、iPS細胞を含有した足場材料を、気管と共に一塊として摘出した。その後、気管軟骨の再建部位の組織像に関して評価を行った。全例ではないが、足場材料内にiPS細胞由来の軟骨様組織の形成が認められ、気管欠損部における、iPS細胞を利用した軟骨組織の再生が示された。
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Annals of Otology, Rhinology & Laryngology
巻: 119(10) ページ: 697-703
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