研究概要 |
高血圧や慢性腎炎,糖尿病性腎症の発症・進展,そして高血圧性腎障害,慢性腎炎,糖尿病性腎症の増悪から腎不全へと至る過程において,レニンーアンジオテンシン系の主要な受容体である1型アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)とその情報伝達系の腎局所での活性化は極めて重要な役割を演じている.また,最近では食塩感受性高血圧の発症・進展とそれにともなう心血管系病変および腎障害における腎でのAT1受容体情報伝達系活性化の関与の可能性が指摘されている.AT1受容体に直接結合し,その機能を制御しているATRAP(angiotensin II associated protein)にっいて,申請者らは以前,自然発症高血圧ラットを用いた検討で,AT1受容体阻害薬が降圧効果に依存せずに組織特異的にATRAPとAT1受容体の発現バランスを改善することによって、高血圧性心肥大を抑制する機序を提示した,そして今回Dah1食塩感受性高血圧ラットを用いた検討では,高食塩負荷による食塩感受性高血圧にともない腎組織内のATRAP発現量の低下が認められたが,AT1受容体阻害薬を性成熟期前より持続あるいは性成熟期前のみ一過性投与した際に,持続性の降圧効果と腎障害の改善効果とともに腎でのATRAP発現の回復が確認された.本研究の結果,食塩感受性高血圧における腎障害へのAT1受容体を介した酸化ストレス亢進の関与が示されるとともに,食塩感受性高血圧における腎障害に対してATRAPが抑制的に作用して腎保護作用を発揮しているとともに,AT1受容体阻害薬の一過性投与による長期的な降圧効果や腎障害の改善効果には腎組織における持続的なATRAPの発現回復効果が関与している可能性が示唆された.
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