本研究は、浸軟皮膚の生理機能および色調・形態的特徴を明らかにし、浸軟皮膚がIncontinence-associated dermatitis(以下IAD)のリスク状態として妥当であるか、またその色や形態の特徴は何かについて検討した。その結果、浸軟皮膚は非浸軟皮膚と比較し、皮膚表面の角層の水分量だけでなく、深層である真皮層の水分量も有意に高いことが明らかとなった。加えて、浸軟皮膚は経皮水分蒸散量(TEWL)や皮膚pHも非浸軟皮膚と比較し有意に高く、皮膚バリア機能が低下していることが示唆された。以上の結果より、排泄物による浸軟皮膚は深刻な状態であるといえ、IADのリスク状態として可能性が高いことが明らかとなった。排泄物による浸軟の色調および形態的特徴に関しては、発赤の程度が抽出された。視覚的な判別が難しい浸軟皮膚の特徴が定量化されることにより、IADのリスク状態である浸軟の判別が容易になると期待できる。
|