就労をめぐっては、精神障害者は継続的に就労に就くことが困難であることが多く、また無理な就労により疾病と障害の悪循環を繰り返しやすい。家族の中には、このような状況に対し、悲しみや怒り、またそうした感情を抱く自身に罪悪感を感じ、揺れ動く両価的感情を生み出していると思われる。家族の両価的心情については先行研究で精神障害者の家族の特性として述べられていたが、本研究で明らかにしようとするのは、この両価的心情の揺れ動きの中で、家族が抱く「精神障害者が就労すること」への想いの内容とその変化の過程を明らかにし、家族が抱く「就労」への想いをふまえた看護援助への示唆を得ることである。 平成21年度は、精神障害者の家族抱く「精神障害者が就労することへの想い」を追求するため、参加観察(「ある程度観察もするが参加が主」という立場)とインタビューにより、「家族員である精神障害者が就労すること」について、家族はどのような想いを抱いてきたか、それはどのように変化したのか、その経験に焦点を当て情報を収集する予定であったが、家族会活動が月2回と少なく、年末年始に活動が行われなかったため、参加観察の実施が6回のみで、個別のインタビューの実施には至らなかった。そのため、当初の研究計画を修正し、データ収集期間を22年度5月まで延期とする。21年度の参加観察によるフィールドノーツでは、家族会活動において、「家族員の働くこと」に関する話題の記録が殆ど見当たらず、このことがどのようなことを意味するのかも踏まえ、22年度のインタビュー、参加観察に繋げ、研究成果をまとめていきたいと考えている。
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