Invは腎臓形態形成や左右軸決定に重要であり、繊毛基部に局在する分子である。しかしInvがいつ、どのように、どこで機能するのかは未だに不明である。本研究はInv細胞内局在と生理的機能の関連について、ゼブラフィッシュを用いた生体レベルでの解明を目的に研究を行った。昨年度、Invが有するカルモジュリン結合領域(IQドメイン)の機能について検討した。その結果、IQドメイン依存性のInv繊毛局在が腎臓形態形成に必要であることが示唆された。本年度さらに詳細な検討を行った結果、カルモジュリンとの結合依存的なInv繊毛局在が、腎臓形態形成のみならず左右軸決定も制御することが明らかとなった。詳細結果を以下に記載する。 まず、昨年度までの結果を詳細に解析する系を構築するため、改変型Tol2トランスポゾンを用いてゼブラフィッシュ前腎(腎臓)と心臓で蛍光発現するトランスジェニックラインを作製した。このラインに対しInv発現を抑制することで、嚢胞腎形成過程をリアルタイムで観察できた。これにより、昨年度明らかになったIQドメイン依存性の腎臓形態制御機能を明確かつ定量的に示すことが可能となった。また野生型において、心臓の位置は2日胚の段階で左側に位置し左右非対称性を示すが、inv発現を抑制することで心臓が右側に位置する個体が有意に多く観察された。しかも、IQドメインを欠失したInvを注入しても左右非対称性の異常は改善されなかった。以上からIQドメイン依存的なInv機能が生体制御に関与することが示唆された。
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