以前申請者らは、マウスを用いた実験的網膜新生血管モデルにおいて、遠赤外線の網膜照射が血管新生を抑制することを証明した。この遠赤外線の同部位への複数回照射がマウス網膜に与える影響を検討すること、更に血管新生抑制効果を有する最小エネルギーを検討することを今年度の目的とした。まず研究計画に記載した照射条件で遠赤外線をマウス網膜に照射し、その影響を組織学的に検討した。光学顕微鏡レベル、更に電子顕微鏡レベルにおいても特記すべき組織障害は認められなかった。複数回照射に関しては、照射間隔を1カ月、計3回の照射について現在検討中である。次に遠赤外線の照射径を2倍にし(単位面積当たりの照射エネルギーは1/4になる)、その新生血管抑制効果を検討した所、この条件下でも実験的網膜血管新生は抑制された。更に初期条件で遠赤外線をマウス網膜に照射した後、30分後に組織を採取してmRNAを抽出した(コントロールとして正常マウス網膜を使用した)。このmRNAを用いて主要血管新生抑制因子であるThrombospondin-1 (TSP-1)、PEDF及びendostatinの発現をreal-time PCR法で比較検討した。endostatinに関してはコラーゲン18とそのC末端を切断する酵素であるcathepsin BとMMP-7の発現を検討した。コントロールに比して遠赤外線照射群でTSP-1、cathepsin Bの発現亢進を認めた。現在、遠赤外線照射1時間後、2時間後のmRNAを採取し、これらのtime pointにおける上記血管新生抑制因子の発現も検討中である。
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