本研究は、申請者らがスペクトラルドメイン光干渉断層計(OCT ; optical coherence tomography)を利用して新規に開発した「脈絡膜断層像の視覚化法および脈絡膜厚の測定法」を用いて、種々の網脈絡膜疾患眼および緑内障眼における脈絡膜の定性的・定量的変化を網羅的に解析し、脈絡膜の変化に注目して各疾患の病態を解明することを目的としたものである。平成21年度は滲出型加齢黄斑変性(AMD)を対象として中心窩下脈絡膜厚測定を網羅的に施行した。広義の滲出型AMDは臨床的に狭義AMD、ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)、網膜血管腫状増殖(RAP)に分類されるが、これらの中でPCVが有意に中心窩下脈絡膜厚が厚く、その病態に脈絡膜血管の拡張や透過性亢進所見が関連しているものと推察された(第63回日本臨床眼科学会)。同様に片眼性の滲出型AMDにおいてその僚眼との中心窩下脈絡膜厚を比較してみると、PCVでは患眼が僚眼よりも有意に厚いが、狭義AMD、RAPでは患眼と僚眼に差はみられなかった(第114回日本眼科学会発表確定)。また緑内障において線維柱帯切除術後の眼圧下降に伴い脈絡膜厚が増大し、減圧手術は眼圧下降により直接的な視神経乳頭の機械的圧迫を減じるだけでなく、脈絡膜血流の改善により神経保護効果をもたらす可能性も示唆された(第20回日本緑内障学会)。これらの結果より脈絡膜厚の評価は黄斑疾患、緑内障において病態の理解、治療効果の評価に今後もさらに重要性を増していくものと考えられた。
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