研究概要 |
6週齢のDahl食塩感受性ラットに、0.1%低食塩食または8%高食塩食を12週齢まで6週間負荷した。摘出腸間膜動脈において、acetylcholine(ACh)によるEDHFを介した過分極および弛緩反応を、微小電極法および等尺性収縮法を用いて検討した。さらに、NOを介した内皮依存性弛緩反応、levcromakalimによる内皮非依存性弛緩反応についても検討した。収縮期血圧は高食塩群で低食塩群に比し有意に上昇した。AChによる内皮依存性弛緩反応には群間で差を認めなかった。しかし、AChによるNOを介した内皮依存性弛緩反応は高食塩群で低食塩群に比し有意に減弱していた(最大弛緩;60±4vs.80±1%;p<0.001;n=8-9)。一方、AChによるEDHFを介した内皮依存性弛緩反応は、高食塩群で低食塩群に比し有意に増強しており(最大弛緩;66±4vs.50±3%,;p<0.01;n=12-14)、EDHFを介した弛緩反応の増強は、高コンダクタンスのカルシウム依存性カリウムチャンネル(BKCa)阻害剤であるiberiotoxin存在下で消失した。AChによる内皮依存性過分極反応には群間で差を認めなかったが、過分極反応は高食塩群でのみiberiotoxin処置で減弱する傾向にあった。Levcromakalimによる内皮非依存性弛緩反応には群間で差を認めなかった。以上、Dahl食塩感受性ラットの腸間膜動脈では、高食塩負荷によりNOを介した弛緩反応が障害されていた。一方、EDHFによる過分極および弛緩反応は高食塩負荷後も減弱しておらず、障害されたNOの代償機構としてEDHFが内皮機能保護的に作用していると考えられた。さらに、高食塩負荷状態下では、BKCaチャンネルが活性化されることでEDHFが保たれている可能性が示唆された。
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