1. 研究成果の内容 高齢者の地域社会における役割を見直すために高齢者及び他世代を含む住民同士の話し合いを中心としたヘルスプロモーションプログラムを作成し、実施した。その結果、住民の関係づくり、相互作用が促進され、住民ニーズに基づいた新たな役割が住民主体により創出された。 具体的には、高齢者に期待されている地域社会の役割は「一人暮らし高齢者の見守り」であった。その役割を実践するためには、近隣住民の関係づくりが必要なことが地域の課題であることが共有された。その結果、住民の関係づくりとして、ラジオ体操、公園清掃ボランティア、一人暮らし高齢者に絵手紙を届けるボランティア活動等が開始された。 平成23年3月に追跡調査を介入及び対照地区において60歳以上住民全員に実施し、219名(77.9%)から回答を得た。現在、地域高齢者が役割を実践したことによる効果の検討をするため、心身の健康、QOL、社会活動、社会関係への影響を分析中である。 2. 研究成果の意義、重要性 地域住民と高齢者のニーズに基づき、高齢者の地域における役割を見直し、実践へとつなげるヘルスプロモーションプログラムの開発および効果を検証した研究は極めて少ない。今回、その科学的根拠を示すことにより、今後の地域における高齢者の健康づくり戦略の新たな視点を提示することにつながる。また、本研究は研究者、住民、保健福祉の実践者が協働して行うアクションリサーチであることに特徴があり、研究者が望ましいと思われるプログラム内容を対象者に提供し、評価する従来の研究方法に比して、本研究の手法は地域のニーズを反映したプログラム化の可能性を示唆している。さらに、本研究では介入プロセスそのものを記述・評価しながら展開したことにより、介入方法の一般化につなげることが可能である。
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