スタチンは、HMG-CoA還元酵素阻害薬で高コレステロール血症治療薬として使用されている。しかしスタチンには、低頻度ながら重篤な副作用で、筋肉のタンパク質分解が亢進する横紋筋融解症が報告されている。この原因については、アポトーシスの誘導などが考えられてきたが、詳細は明らかでない。 このスタチンによる横紋筋融解症の原因を研究する中で、スタチンが、横紋筋肉腫由来A204細胞で非選択的なタンパク質分解機構であるオートファジーを顕著に誘導することを見出した。スタチンによるオートファジー誘導が横紋筋融解症の発症に関与すると考えて、本研究計画では、スタチンによるオートファジー、細胞死誘導の分子機構を明らかにすることを目的として、レトロウイルスを用いたgene trap法によるランダムな遺伝子破壊実験を行い、関連遺伝子の同定を行うこととした。 平成21年度では、1、A204細胞のスタチンによるオートファジー、細胞死誘導条件の検討。2、レトロウイルスの作製と感染。3)スタチン耐性細胞のセレクションを行った。2、レトロウイルスの作製と感染を検討した際には、当初予定していたβガラクトシダーゼ遺伝子とネオマイシン耐性遺伝子を融合して発現するpROSA β-geoベクターよりもGFP遺伝子とネオマイシン耐性遺伝子を別々に発現するpDisrupベクターで、効率よく遺伝子破壊株を作製することができると結論し、使用するベクターの変更を行った。3、スタチン耐性細胞のセレクションでは、計画通り複数の濃度でのセレクションを行った。その結果、薬剤濃度により得られるクローン数が異なり、種々の異なる応答を示す細胞をクローニングすることに成功した。この結果は、スタチンによるオートファジー誘導に関連した、複数のパスウェイを見出すことができる可能性があり、今後の解析が期待される。
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