本研究は、前立腺がん患者の術後機能障害に対する対処行動の実態に焦点をあてて、障害に対する思いや障害に関連した生活の困難感、対処の実際を明らかにした上で、術後機能障害に対する対処行動を評価する尺度を開発し、その有用性を検討することを目的とした。平成21年度は1.文献レビューとして、前立腺がん患者の術後機能障害に対する対処方法や具体的な術後機能障害への支援に関連する内容の国内外の文献・資料を収集し検討した。2.検討した内容からインタビューガイドを作成し、半構成面接を実施した。対象者は前立腺がん患者15名で、排尿障害・性機能障害の両方かどちらか一方を主訴としてあり、手術後1年以内の患者を対象選択の条件とした。現在面接調査で得られた録音データの逐語録を作成し、障害への思いや対処行動の一連の関連等に着目しながら質的に分析の途中である。これまでの分析の中で、術後機能障害の程度の差は、対象者の年齢・術後期間・合併症の有無に影響していた。しかし年代や障害の程度などの背景が同じでも、障害に対する思いや負担感情は一様ではなく、きわめて多様性であることがわかった。そのため障害に対する具体的な対処方法は、排尿障害であれば尿失禁が軽減するような、骨盤底筋体操を積極的に実施したり、尿とりパットのあて方や素材を検討したりと、問題に対して患者自らが直接的な介入を行っていた。性機能障害に対しては、自尊心が低下するといった負担感情を持つ一方で、散歩や旅行、友人との食事などで気分転換を図るなどしながら、間接的な問題解決の対処行動をとっていた。次年度は早期に質的分析を完了し、尺度の原案を作成したのち質問項目の表現の妥当性および信頼性の検証を行い、尺度を完成させる予定である。
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