本研究の目的は、前立腺がん患者の術後機能障害に対する対処行動尺度の開発である。今年度は、前立腺がん患者を対象にした面接調査結果から抽出した自覚症状や術後機能障害、それに伴う対処行動および既存のストレス対処行動尺度のレビュー、泌尿器科専門医および臨床看護師からの専門知識の提供にて、暫定版尺度を完成させた。また尺度開発の経験がある大学教員1名、外来看護師3名には暫定版尺度の項目について、術後機能障害に対する対処行動を問う内容になっているか確認を依頼し内容妥当性の確保を十分に検討した。その結果、26項目を術後機能障害に対する対処行動項目とした。その後、118名を対象に信頼性と妥当性の検討のため質問紙調査を実施した。信頼性については、76人を対象に再検査を実施し安定性を検討した。その結果、すべての項目で相関係数が0.40以上であった。内的整合性を示すCronbach's α係数は全項目で0.81であった。また因子分析は主因子法バリマックス回転を行った。因子数の決定は因子負荷量1以上や累積寄与率等を考慮して分析した結果5因子が解釈可能で適切であると判断した。それぞれを<直接的問題解決行動><間接的問題解決行動><身体症状><精神症状><生活上の困難>と命名し、下位尺度とした。臨床への応用としては、<身体症状><精神症状><生活上の困難>について項目を得点化し分布図で示し、患者の問題解決行動について特徴的な該当項目を表示・評価・結果内容をフィードバックし、術後機能障害に対する日常生活行動の一助として活用することができた。
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