本研究では、申請者の所属研究グループが世界に先駆けて発見した、骨形成を促進する血小板由来タンパク質の作用機序の解明と将来的な臨床応用を目指し研究を進めている。本年度はまず、大腸菌の発現系を用いて目的タンパク質を調製し、Bone Morphogenetic Protein (BMP)による骨芽細胞分化誘導の促進活性を評価した。その結果、得られた組み換えタンパク質はBMPによる骨芽細胞の分化を促進した。また、この組み替えタンパク質をBMPとともにマウスに移植する事で、BMPによって誘導される異所性骨形成が強く促進される事を確認した。一方、目的タンパク質単独の場合では骨芽細胞分化誘導とマウスにおける異所性骨形成は引き起こさなかった。 目的タンパク質はBMPシグナルを増強する事から、細胞内BMPシグナルの調節機構を解析した。BMPによる細胞内シグナル伝達には転写因子Smadのリン酸化が重要で、この脱リン酸化を調節するホスファターゼPPM1AはBMP活性を阻害する事が明らかとなった。さらにこの機序を解析した結果、PPM1AはSmadの脱リン酸化を起こすだけではなく、プロテアソーム系を介したSmadの分解を促進する事でBMPシグナルを調節している事が明らかとなった。 従って、目的タンパク質のBMPシグナル増強の作用機序として、PPM1Aなどの因子を介したSmadのリン酸化への影響を検討する必要があると考えられた。
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