妊娠糖尿病時の母体栄養環境変化に対応した血液胎盤関門機能制御を明らかにするため、ストレプトゾトシン誘導糖尿病妊娠ラットにおいて解析を行った。その結果、妊娠糖尿病ラットの胎盤において核酸トランスポーターCNT2 mRNA発現量および胎盤刷子縁膜ベシクルに対するadenosine取り込みへのNa^+依存性取り込みの寄与率がいずれも有意に増加していることが示された。従って、妊娠糖尿病病態において血液胎盤関門におけるCNT2を介したNa^+依存性adenosine取り込みの寄与が増大していることが示唆された。CNT2の発現量増加は、母体血中adenosineをより能動的に取り込むためのメカニズムと考えられ、胎児におけるadenosine作用の増強に関与している可能性がある。 胎盤絨毛cytotrophoblastはsyncytiotrophoblastへと分化することで関門を形成するため、分化を通じた血液胎盤関門機能制御機構の解明は重要である。未分化cytotrophoblastモデルであるヒト絨毛癌由来JEG-3細胞をforskolin処理することで分化誘導した結果、血液胎盤関門選択的に高発現するorganic anion transporter(OAT)4(SLC22A11)mRNAの発現量および輸送活性が有意に増加することが示された。本誘導効果は、protein kinase A(PKA)阻害剤によって阻害された。従って、血液胎盤関門におけるOAT4の発現には、syncytiotrophoblastへの分化過程におけるPKAへを介した発現誘導機構が関与していることが示唆された。
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