研究課題
本研究で用いる新しい定義(PDGFRα+,Sca1+)の間葉系幹細胞(MSC)が、がん微小環境でどのように変化し、腫瘍にどのような影響を与えるかを評価した。マウス骨髄よりMSCを分離培養し、大腸がん細胞と共にマウスに皮下移植すると腫瘍の増殖が亢進する事から、MSCはがんの増殖に対して影響を与えている事が示唆された。次にGFPマウスの骨髄を野生型(WT)マウスに移植し、骨髄由来のMSC及び血球がGFPで標識されているマウスを作製した。このマウスに癌細胞株を皮下移植し、腫瘍が増大した時点で組織中のGFP陽性かつMSCマーカー陽性細胞の割合をFACSにて測定した。その結果、骨髄MSCはがん局所に移動し、一部はがん細胞と融合する可能性が示唆された。次にGFPマウスより骨髄MSCを、WTマウスより骨髄細胞を採取し、WTマウスに骨髄移植しMSC由来の細胞のみがGFPでマーキングされたキメラマウスを作製した。このマウスに大腸がん細胞を皮下に移植したところ、腫瘍局所にGFP陽性細胞を認め、このモデルでも骨髄由来のMSCが癌局所に移動している事が分かった。現在、骨髄由来の腫瘍局所MSCを分離し、網羅的な発現遺伝子解析を行っている。また、ヒト骨髄より二つのマーカーで分離し、ヒトのMSCの免疫学的特性も評価した。Bio-plex(Bio-Rad社)を用いた網羅的な液性因子の解析では、免疫抑制性のIL-6、MCP-1、VEGFや、免疫細胞の誘導に関連したIL-8とGRO-aなどが高産生していることが確認された。膜分子では、CD80、CD83、CD86の発現は無く、免疫抑制に関わるPD-L1やPD-L2が発現していた。また、MSCは、単球から抑制性樹状細胞を誘導する事や、末梢血単核球の増殖を抑制する事が分かった。これらの事より、本方法で分離されたヒトMSCは免疫抑制能を有することが示唆された。
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