研究概要 |
本邦の自殺者数は年間約3万人以上で推移し有効な自殺対策が急務である。自殺の危険を高める要因で重要なのは、自殺未遂経験があることとうつ病に罹患していることである。自殺未遂経験のあるうっ病精神科入院患者は、自殺未遂者の再自殺を防止するために最優先で取り組むべき対象であるガ、これらの患者への看護が明らかになっていない。一方で、一定の看護経験がある臨床精神科看護師は、経験的にこれらの患者へ有効である可能性が高い看護行為を行っていることが予測される。これらを共有し具体的に検討するためには、自殺未遂経験のあるうつ病入院患者に特異的な看護行為を帰納的に抽出し一般化する必要がある。本研究は、精神科看護師が行っている自殺未遂経験のあるうつ病入院患者への看護行為をGrounded Theory(strauss et al., 2007)の継続的比較分析を用いて帰納的に明らかにすることを目的とした。平成21年度は、関東圏内の施設に所属する精神科経験年数3年から18年の看護師5名へ個別にインタビューを行い逐語録を作成しこれらをデータとして分析した。 この結果、68のカテゴリ、すなわち看護行為が抽出された。具体的には、入院全体を通して「患者の普段の感情の高さと揺れ幅を保てるよう関わる」「切迫した自殺の危険がある時は患者のそばを離れない」入院初期には「患者の好きなように過ごしてもらう」「患者が1人で休める安全な空間を確保する」「患者の馴染みになる」「死にたいほどのつらい思いがあったのだと患者に言う」入院中期力から後期には「患者が入院時よりよくなっていることを具体的に患者に伝える」「患者の自殺のきっかけとなった出来事を一緒にふりかえる」「再自殺防止の工夫について患者の考えをひきだす」等である。平成22年度は、関東圏外施設も含め理論的サンプリングによるデータ収集を行い、概念と概念間の関連について分析し構造化し、最終的に、自殺未遂経験のあるうつ病入院患者に特異的な看護行為を理論化する。
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