研究概要 |
本研究は、精神科看護師が行っている自殺未遂経験のあるうつ病入院患者への看護行為を帰納的に明らかにすることを目的として、精神科病棟看護師30名へ半構造化インタビューを行い逐語録を作成しこれをデータとして、Grounded Theory(strauss et al., 2007)の継続的比較分析を用いて分析した。line-by-line analysisによりpropertiesとdimensionsを抽出してこれを用いてデータを概念ごとに分類し、類似している概念をグループにしてカテゴリ名をつけ、paradigmと条件/帰結matrixを用いてカテゴリ間の関連について検討し、分析に並行してtheoretical samplingによるデータ収集を行った。さらに中核カテゴリを抽出しストーリーラインを記述した。結果として、看護師は、通常とは異なる患者の言動があった際や患者の自殺のきっかけとなった出来事に患者が直面化した際には、再度の自殺の危険が高いと考え、患者の言動の不一致や変化に注目した観察を行い、危険があれば自殺念慮の有無を確認する等の介入を行っていた。急性期には、患者が少しでも休養できるように、言語的関わりや患者の負担となる話題を最小限にし、一方で、再度の自殺の徴候の早期発見のため、患者との信頼関係構築のため、患者が安心感を得るために、頻回に短時間の訪室をし、非言語的な関わりと観察を主に行っていた。この際、看護師は、患者の希望を推測し適宜確認し日常生活援助を行い、また、24時間いつでも声をかけてほしいと患者へ提示していた。患者が入院生活に慣れ休養でき始め看護師との信頼関係構築が進行すると、患者が語り始めたタイミングに合わせて患者の話を傾聴し、この際、患者の語りの文脈に沿って質問をしていた。質問は、退院後の患者の再度の自殺防止を目的に、患者が自分で気分の大きな揺れを調整する力、考え方を調整する力が増すように行っていた。本研究により当該患者への看護が明らかになり精神科看護の発展や有効性の検証のための基礎資料となり、また、これらの患者へ看護経験の少ない看護師の参考にもなる。
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