本研究では、iPLA2γ遺伝子改変マウス用いた解析により、特に明らかな表現型が認められた筋肉組織、脂肪組織、血小板・血液凝固おける本酵素の機能を解明することにより、本酵素の生体内における特有の機能を解明すると共に、本酵素をターゲットとした治療薬の発見を目指している。本年度は以下のことを明らかとした。 筋肉組織における解析 iPLA2γ欠損マウスの筋肉組織では、ミトコンドリアの消失及び機能障害が生じていることが明らかとなった。また、筋肉組織中の過酸化脂質量の増加を始めとする酸化ストレスが生じていることが明らかとなった。さらに、欠損マウスの筋肉組織ではミトコンドリアの主要構成脂質であるカルジオリピン量が野生型のものと比べて有意に減少した。 脂肪組織における解析 野生型とiPLA2γ欠損マウスの胎児から胎児由来線維芽細胞MEFを調製し、脂肪細胞へ分化誘導させたところ、iPLA2γ欠損マウス由来のMEFは野生型のものと比べて脂肪細胞への分化、すなわち脂肪の蓄積が少ないことが明らかとなった。 血小板における解析 野生型あるいはiPLA2γ欠損マウスから、血小板を単離して、血小板を活性化する作用をもつコラーゲン、ADP、トロンビン、U46619(トロンボキサン受容体活性化剤)で血小板を刺激し、この時の血小板の活性化の度合いを、凝集の度合い、トロンボキサンA2産生量、ATP放出量を測定することで評価した。その結果、iPLA2γを欠損した血小板はADPで刺激した際の凝集度合いとトロンボキサン産生量が野生型のものと比べて有意に減少することが明らかとなった。また、コラーゲンで刺激した時のトロンボキサン産生量も欠椙マウスで有意に減小した。
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