超高齢社会の日本にとって、組織再生メカニズムの解明および再生促進薬剤の開発が重要かつ急務である。本研究では歯の再生および再生促進漢方薬剤の開発のために、歯発生初期に起こる上皮陥入の誘導による再生歯の三次元モデルを構築し、歯再生過程における分子メカニズムの解明を行い、歯の再生を促す漢方薬剤を開発する。 平成21年度では、当研究の進行程度は以下の(1)-(4)である。(1)特定な培地でヒト歯髄間葉細胞から高い再生能や分化能を有する三次元スフェロイドを形成し、その中心部に幹細胞様細胞、中間部に増殖細胞、辺縁部にApoptosis細胞が多くみられた特徴は、生体器官発生中のHomeostasisに類似していることから、再生医学や創薬ならび病態解析などに広く応用できる可能性がある。(2)ヒト口腔粘膜上皮細胞やヒト歯髄間葉細胞由来のスフェロイドまたはセールシートをコラーゲンゲル及びマトリゲルの中に播種し、三次元培養下で再生歯の初期モデルの構築に成功した。この再生歯のモデルでは、間葉組織の中に上皮組織の陥入が観察された。上皮-間葉相互作用による石灰化マーカー(ALP、DSP、DMP1等)の発現が免疫染色法で確認された。今後さらに上皮陥入のシグナルを免疫染色やqRT-PCR法等で解析する予定である。(3)再生促進漢方薬剤の開発では、骨砕補や拘杞などの細胞毒性試験を行って、安全濃度範囲を確定した。現在、漢方薬剤によるヒト歯髄細胞分子マーカーの変化および初期歯モデルの再生、分化への影響が観察中である。(4)上記の研究を進んでいるうちに、簡易な細胞生存力および石灰化の定量測定法を開発し、そのコストは市販同類品の約1%である(特許出願準備中)。 上記の研究成果は歯をはじめとする組織再生における分子マーカーの変化および分子制御を解明するために、重要なアプローチを提供する。
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