研究概要 |
歯周病は、歯槽骨の吸収により歯が失われる病気である。歯周組織への細菌感染により、歯肉の炎症や破骨細胞による骨吸収が惹起され、歯周組織が破壊される。そこで本研究では、歯周病の病態解明のために、以前我々の同定した、増殖することなく破骨細胞に分化する前駆細胞(cell cycle-arrested quiescent osteoclast precursors : QOP)に着目して、本研究を進めた。平成22年度に計画したQOP画分[RANK^<high>, Fms^<low> : RANK(+)細胞]のマイクロアレイ解析において、各種遺伝子マーカーの解析を行った。QOPはFms(+)細胞[RANK^<low>, Fms^<high>]と比較して、Emrl(F4/80)、Itgam(CDllb)などのマクロファージ系マーカーは低い値を示したのに対して、Car II(Carbonic anhydrase II,Mmp9(matrix metalloproteinase 9)、Acp5(acid phosphatase 5)、Tfrc(transferrin receptor)などの破骨細胞系マーカーは高い値を示した。また、QOPを電子顕微鏡にて形態的に破骨細胞およびF4/80陽性細胞(マクロファージ)と比較したしたところ、QOPはより破骨細胞に近い所見を示した。以上より、生体内のQOPはマクロファージより破骨細胞に近い細胞と考えられる。本期間中に研究目標であるQOPの遊走因子の解析までは至らなかった。しかしながら、QOPの性状を詳細に解析し、より破骨細胞に近い細胞であることを明らかにした。よって更なる解析によりQOPの遊走因子を解明することにより、歯周病により誘導されるQOPの遊走因子を同定し、最終的にQOPの分化と遊走をコントロールした歯周病治療を含む、骨疾患治療指針の確立することができると考える。
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