今年度は、コムギ無細胞タンパク質合成系で作製した2243種のビオチン化ヒト自己抗原タンパク質を対象に、関節リウマチ患者血清および滑膜ホモジナイズ上清中の抗体が反応する抗原タンパク質を、AlphaScreen法により探索した。その結果、複数のタンパク質において、シグナルが高値を示した。また、滑膜ホモジナイズ上清と血清における同一抗原に対する抗原抗体反応シグナルについて、一部の抗原で異なるパターンが認められたものの、組織抽出物でシグナルの高い抗原タンパク質は、血清でもシグナルが高い傾向が認められ、多くのタンパク質において、組織抽出物と血清が類似した反応パターンを示した。 滑膜ホモジナイズ上清を用いた網羅的な抗原タンパク質の探索結果から、各患者においてS/N比が上位5種類のビオチン化タンパク質を選抜した。そして、重複を除いた合計18種類のビオチン化タンパク質をプローブとして、対応する患者滑膜組織の4%PFA固定後凍結切片を対象に、酵素抗原法を実施した。その結果、2種の抗原において、滑膜組織上の一部の形質細胞に特異的な陽性像が認められた。一方、他の抗原タンパク質では、ほぼすべての形質細胞が陽性であったり、形質細胞以外の細胞にも非特異的陽性像が認められたり、あるいは組織全体において陰性であり、特異的な陽性染色像は検出できなかった。 以上のことから、滑膜ホモジナイズ上清など組織抽出物を用いることによって、病変局所で特異的に産生される抗体の標的抗原タンパク質の網羅的な探索が可能であることが明らかとなった。さらに、無細胞合成系で作製したビオチン化タンパクを、未精製の状態で、酵素抗原法のプローブとして使用できることが明らかとなった。
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