2008年度から経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア人看護師・介護福祉士候補者が来日している。日本という異国の地であっても長く就労できるように、また、文化的相違から生じ得る日本人スタッフとの衝突を未然に避けるよう、"インドネシア人現役看護師"を深く理解することを目的として、本研究に取り組んできた。 具体的には、インドネシア大学と現地病院関係者の協力の下、2010年10月にジャカルタ市(ジャワ島)とブカンバル市(スマトラ島)に所在する2病院において、看護師等を対象とした匿名のアンケート調査を実施した。 今回、回答をいただいたのは249名(うち、15名の助産師を含む)の現役看護師等であり、回答者の67%が30歳未満という若い年齢層であった。調査の結果、インドネシア人看護師達等が、日常生活の中で重要だと考えるものについて5件法で聞いたところ、最も高かったのは、「家族」、次いで「宗教」、「労働」であった。それ以外には、「お金」、「結婚」等が挙がっていた。また、職務満足度について同じく5件法で聞いたところ、最も平均値が高かったのは、職場での「管理」や「責任」、「研修機会への参加」等の項目についてであり、逆に最も平均値が低かったのは、「パートタイム勤務の機会」、「連続勤務の機会(同シフトによる勤務)」などの、スケジューリングや労働と家庭生活のバランスに関するものであった。 インドネシア人看護師等が「家族」や「宗教」を日常生活でとても大切だと考えていることから、それらを優先できない要因となり得る自身の"勤務スケジュール"についての項目の満足度が低くなっているのではないかと思われる。
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