本研究は訪問看護ステーションの看護師への聞き取り調査により精神科訪問看護の推進に関連する要因を明らかにすることを目的としている。平成21年度の調査を継続し、平成22年度は精神科訪問看護を専門としていない訪問看護ステーション3箇所の研究協力を得て、各ステーション1~2名、計5名の看護師に対して聞き取り調査を行った。また、上記調査の結果を踏まえ、精神科訪問看護を専門とする訪問看護ステーション3箇所の研究協力を得て、各ステーション2~3名、計8名の看護師に対して聞き取り調査を行った。 精神科訪問看護を専門とする訪問看護ステーションの看護師への聞き取り調査の結果から、精神科訪問看護の推進を妨げる要因には、利用者に関わることへの不安・恐れ等の看護師側の要因、人的な余裕のなさ等のステーション側の要因、看護師への報酬が少ない、利用者の利用できる社会資源が限られている等の制度上の要因があることが明らかになった。一方、推進を促す要因には、利用者のストレングスに着目した援助を行う姿勢、利用者のニーズにタイムリーに応じる姿勢等の看護師側の要因、看護師への適切な心理的ケア、管理者による利用者および担当看護師の調整、利用者のニーズに柔軟に対応できる体制といったステーション側の要因、看護師の待遇改善、社会資源の構築等の制度上の要因があることが明らかになった。 精神科訪問看護を専門としていないステーションと専門とするステーションでは、利用者への関わりにおける不安や恐怖等は共通してみられるものの、利用者のとらえ方の違いが看護師の訪問しようとする意思に影響を与えていることが考えられた。専門とするステーションでは、看護師の過去の経験やステーション内での協力体制等を活用して訪問看護実践を行える環境が整っており、専門としていないステーションとの連携を図ることで、精神科訪問看護の推進につながることが考えられる。
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