災害に適切に備えるために看護基礎教育から継続教育に至る段階的で効果的な教育・訓練プログラムの開発が喫緊の課題となっている。本研究はそのために欠かせない災害看護に必要な能力を明らかにし構造化することを目的としている。災害サイクルのうち、特に看護ケアが求められる急性期から亜急性期の看護師の行動に焦点を当て、災害時に高い実践能力を発揮した看護師の看護行動や残った課題から、災害時に看護師が身につけておくべきコンピテンシーと単なる枠組みに留まらない具体的な事例の抽出を行い構造化する。 本研究は2年計画であり、初年度である平成21年度は阪神・淡路大震災(1995年)以降に国内で発生した地震や風水害、交通事故などのうち大規模災害の現場で、看護者として医療ケアに従事して高い能力を示した30名の看護師を対象にした。看護管理者、外来・病棟看護師、被災地に派遣された看護師に行動結果面接により高いパフォーマンスを上げた自己および他者の看護行動と、災害現場で上手く対応できずに残った課題を語ってもらった。それぞれの語りは逐語録としてデータベース化し、コンピテンシー・ディクショナリーを構築した。 その中から、災害時の看護管理者及び外来・病棟看護師の行動について成果を挙げたものと、残った課題それぞれの側面から分類し、看護師に求められる看護行動の検討を行ったところ、発災直後から自ら積極的に役割取りをしながら、入院・通院患者、病院に押し寄せる被災者に対して懸命に対応する姿や、物品や機材が不足する中で継続的な看護ケアを提供するために工夫を凝らすなど具体的で実践的な看護行動が浮き彫りになった。 平成22年度は、平成21年度の成果を洗練させながら、質的分析および量的分析を組み合わせてコンピテンシーの内容と構造を明らかにする予定である。
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