研究概要 |
βアドレナリン受容体の各サブタイプとリガンド化合物との相互作用基盤を明らかにするため,フラグメント分子軌道(FMO)法による電子状態計算を実行し,受容体内のアミノ酸残基とリガンドとの相互作用について定量的に解析した. β1およびβ3受容体の三次元構造は,β2受容体の結晶構造をもとにホモロジーモデリングにより予測した.各サブタイプとepinephrine, isoproterenol, propranololの複合体について,分子力学(MM)法による最適化を行い,この構造を用いてFMO/3-21Gによる電子状態計算を行った. フラグメント間相互作用解析によると,各サブタイプと非選択的な作動薬epinephrine, isoproterenolとの相互作用エネルギーは,いずれも-45kcal/mol, -65kcal/mol程度であり,β受容体とこれら作動薬との親和性の関係(epinephrine<isoproterenol)を説明するものである.β1受容体において,作動薬・拮抗薬はともに,ASP138, ASN363から安定化に寄与する強い相互作用を受ける。ここで,SER229は,作動薬とは斥力,拮抗薬とは引力を示していることから,薬物の作用に関わる可能性がある.なお,β2およびβ3受容体についても,対応するアミノ酸残基で同様の結果が得られた. このように,薬物標的タンパク質内の各アミノ酸残基とリガンドとの作用について定量的に理解することは,創薬分野に新たな知見を与えるものであり,効率的で精密な分子設計に貢献するものと考える.
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