研究概要 |
論理的な薬物設計においては,標的タンパク質の立体構造情報だけでなく,リガンド化合物との相互作用基盤について理解することも不可欠である.本研究では,Gタンパク質共役受容体-リガンド複合体を対象に,活性の差異を決定付ける因子を電子レベルで明らかにすることを目指した.この因子の解明は,薬物設計において重要な知見を与えるものである. β受容体の各サブタイプ(β1,β2,β3)と種々の作動薬/拮抗薬との複合体について,フラグメント密度汎関数理論による電子状態計算を行い,受容体のアミノ酸残基とリガンドの相互作用エネルギーを解析した.これにより,β受容体の主な結合部位と作用部位は,それぞれ同位のASPとSERであり,これらは複合体構造上も合理的であることを明らかにした. また,脂肪分解を抑制する因子を明らかにするため,β3受容体の変異型と種々の作動薬との複合体について,同様にフラグメント間相互作用解析を行った.野生型の複合体に比べて,変異型の複合体はやや不安定化し,リガンドがプロトン化されることにより顕著になることを明らかにした.
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