本研究は、1.病院情報システム(Hospital Information System : HIS)に蓄積された看護ケアデータの二次利用の可能性を検証する、2.DPCごとに入院期間が長期化する要因や、看護ケア量との関係について明らかにする、3.DPCを用いた日本版Nursing Minimum Data Set(以下、NMDS)の開発に取り組み、看護ケアの均てん化に資することを目的とした。 第1段階として、呼吸器系疾患、循環器系疾患、消化器系疾患の同一DPCコードを有する患者300名を分析した。第2段階は、同様の疾患でも治療方法が様々である上6桁同一DPCコードを有する対象、胃および大腸の悪性腫瘍患者261名を分析した。その結果、入院日数や看護ケア量に影響を及ぼす要因は、患者のADLや治療内容、重症度、治療後の経過、年齢が考えられ、それはDPCによって特徴的な差を認めたが、年齢については全て高くなる傾向にあることがわかった。また、看護ケア量の分析においては、入院期間が長い群ほど日々の看護ケア量は多く提供されており、看護ケアの内容についてもDPCにより差異を認めた。 本研究は、HISに蓄積された看護ケアデータの二次利用の可能性を検証し、入院中の看護度や自由度、輸送区分を患者特性の指標としてデータ活用することの有用性を示した。さらに、看護ケア量とその内容を分析し、患者が入院中にどんな看護をどれだけ必要としているのかを明確にすることができた。これは、アメリカ等で開発が進んでいるNMDSの仕組みに近い考え方である。DPCにおける患者要因を加味した日本版NMDSの開発は、患者の特性に応じた看護資源の予測配分に有用であることが示唆された。
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